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かぐや(その2)
月の重力分布
リレー衛星中継器と衛星電波源による観測
リレー衛星に搭載された中継器は、主観測機が月の裏面にあるときに地球へ電波を中継するためのものである。 この中継局として使用される子衛星の電波源と主衛星自体の電波源を元に、主衛星と子衛星が地球に向いた軌道を周回中に同じ地点を通った場合、個々の衛星の軌道のブレを測定する事が可能である。
この楕円軌道を回る主衛星と子衛星の電波源の軌道遷移を測定し、月の重力分布による重力変動を捕らえる事が可能である。 この軌道変動遷移の差を利用し、月の地下構造やクレーター内部に残る隕石起源の鉱物資源などを探ることができると考えられている。
ハイビジョンカメラ
概要
日本放送協会 (NHK) が開発した宇宙探査機用ハイビジョンカメラ。 打ち上げ時の衝撃に耐えるために、大型ハンマーで叩くなどの実験を経て開発。 心臓部は、高感度CCDカメラ。 理論衝撃耐久能力は、120G。 実効衝撃耐久能力は15G/h。
広角カメラと望遠カメラを隣り合わせに、それぞれ反対方向を向いて機体に固定されている。 動画の送受信と圧縮されたデータの展開には実時間の約20倍かかるため、生中継はできない。
主な撮影対象
2007年9月29日:約10万kmの地点から見た地球
2007年10月31日:嵐の大洋 - ラヴォアジエ・クレーター - レプソルト・クレーター、月の北極
2007年11月7日:地球の出、地球の入り(プラスケット・クレーター)
月の南極・夜明け
オリエンタル盆地
シュレーディンガー・クレーター
画像の公開
動画と静止画がJAXAのWebサイトで公開されているほか、YouTube上のJAXAチャンネル(以前は「かぐや」独自のチャンネルを持っていたが、2009年4月に統合された)でも公開されている。 2007年11月14日にはNHKで『探査機“かぐや”月の謎に迫る』として特集番組が放送された。
「地球の出」に関しては、アポロ計画時代の映像と「かぐや」からの映像を比較することによって、技術の進歩を実感できる映像も公開する予定である。
付記)本ハイビジョンカメラの開発にあたっては設計をNHK、光学レンズをフジノン、搭載カメラを池上通信機、CCD素子を松下電器産業(現:パナソニック)、動画圧縮装置をソニー、機器アセンブルを明星電気、テレメトリを富士通、運用支援ソフトを高知大学が担当した。
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現在までの成果
本格的な解析として、地形カメラが撮影した月南極のシャクルトン・クレーター内の解析を行った結果、露出した氷(水の氷)がほとんど存在しなかったことを明らかにした。 2008年10月23日付の科学誌「サイエンス」(オンライン版)に掲載された。
クレーター年代学により、月の裏側のモスクワの海などの形成年代の調査を行い、従来の推定結果よりも5億年以上、形成時期が若いことを明らかにした。 2008年11月7日付の「サイエンス」(オンライン版)に掲載された。
約677万地点を観測したデータを使い、従来よりも詳細な月の地形図を国立天文台、国土地理院と共同で製作を行い、月の最高峰は10.75キロメートル(従来の値を約3キロ上回る)、最深部がマイナス9.06キロメートルであるといった成果が2009年2月13日付の米科学誌サイエンスに発表された。
日本放送協会が搭載したハイビジョンカメラで、「満地球の出」、「月面」などの撮影に成功。 半影月食が起きた2009年2月19日には、月から見た地球の「ダイヤモンドリング」の撮影に世界で初めて成功した。
子衛星(リレー衛星(おきな))を用いた、月の裏側の重力異常の観測に成功。
科学探査ミッションで得られたデータを、現在(2008年12月21日)も解析中。
月の極点での日照量を正確に測定し、月に永久日照領域が存在しないことを明らかにした。 また、月に永久影が存在することを明らかにした。
2008年5月20日にJAXAから「ハロー」と呼ばれるアポロ15号 (LM) の噴射跡を観測・確認した旨が発表された。
ガンマ線分光計(GRS)を用いて、原子力発電所の燃料となりうるウランを、月面から初めて検出した。
2009年6月11日、最後のミッションとしてギル・クレーター付近の目標地点への制御落下に成功、将来の月面着陸型無人探査機の投入に向けた技術的検証が行われた。
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これからの計画
後継機・無人探査車・月面着陸機
かぐやは月を周回して観測するが、JAXAは「かぐや」後継機で、月面に着陸機を降下し、無人探査車を走行させる直接探査計画も進めている。 早ければ2013年頃に後継機 (SELENE-2) で探査車を送り込み、2018年頃に月の岩石のサンプルを地球へ持ち帰る予定。 JAXAは2006年に月着陸探査検討チームを作り研究を重ねてきたが、技術は完成に近付きつつある。
しかしながら、未解決の問題[24]等があり、かぐやから得られたデータを下にして、慎重に準備を進める予定である。 2013年頃の打ち上げ予定ならば、2008年春頃に宇宙計画委員会へ審議提案、さらに2008年浜松にて予定している技術詳細発表(ISTS: 宇宙技術および科学の国際シンポジウム)、国会や財務省には2009年度の予算編成の頃には詳細な計画や搭載探査装置等について正確な報告がなされると思われる。
キャンペーン
本探査計画を世界に広く知らせるために、また日本の宇宙航空技術への理解を深めるために、2006年12月1日から2007年2月28日まで月に届けたいメッセージを一般公募した(キャンペーン募集ページ)。 メッセージは名前とともに専用の応募用紙、またはインターネットから応募でき、名前とメッセージは衛星に載せられ月を周回する。
また、2007年4月11日から1ヶ月間、セレーネの愛称募集キャンペーンが実施され、5月30日に愛称は“かぐや”とすることが決定した。 愛称に選ばれた応募者に対し、JAXAから認定証、ピンバッチ、クリアファイル及び“かぐや”のA4サイズポートレートが送付された。 その中から抽選で種子島宇宙センターでのかぐや打ち上げに招待された。
かぐや応援キャンペーン
JAXAはかぐやを応援する団体を募集しており、さまざまな企業、団体、個人商店などがキャンペーンに参加している。 音楽ユニットのSOUL'd OUTも参加しており、サポートソングとして「COZMIC TRAVEL」を発表している。
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SELENE-2
SELENE-2(Selenological and Engineering Explorer-2、セレーネ2)は宇宙航空研究開発機構月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC/JAXA)が計画している月着陸探査機である。 過去にはSELENE-B(セレーネB)という名称も用いられた。 かぐや打ち上げ以降はかぐや2やかぐや2号等と称される場合もある。
2010年代半ばでの打ち上げを予定している。
目的
日本初の月面軟着陸(硬着陸はひてんで実施済)を行う計画であり、誤差100mという高精度での軟着陸を目指している。 また、着陸機やローバーによる地質学的、惑星物理学的なその場観測を行い、月の表層や内部構造について調査を行うとしている。
経緯
1999年、SELENE計画(後のかぐや)のプロジェクト化と同時に、SELENEに続く月探査計画としてSELENE-IIの検討が開始された。 これは当時SELENEに搭載予定であった月軟着陸機の次の段階として位置付けられ、月面小型天文台やクレーター中央丘等の地殻深部物質が露出している地域の地質調査を想定し、より高精度な月軟着陸を行うというものであった。
翌2000年8月30日の宇宙開発委員会において、開発リスクの分散のために軟着陸機をSELENE計画から分離するという決定が下された。 これを受けて新たに月軟着陸実験のみを行う工学実験機として検討が開始されたのがSELENE-Bである。
2001年にはSELENE-II候補として検討されていた着陸機と探査車を用いた科学探査案がSELENE-Bにマージされた。
その後2004年にSELENE-Bは工学実験機として宇宙工学委員会へ提出されたものの、コストパフォーマンスが問題となり選定されなかった。 このため、高精度月軟着陸実証の一部を小型月着陸実験衛星(後のSLIM)として計画から分離し、従来の計画をSELENE-2と改名して推進することとなった。
JSPEC設立後の2007年6月にプリプロジェクト化され、2009年現在プロジェクト化に向けて進行中である。
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構成
最低限で着陸機と探査車を持つ。 他にLUNAR-Aのペネトレータの搭載等も検討されている。
着陸機
探査車を搭載し月面軟着陸を行う。 LUNAR-Aで開発された地震計を搭載し月震を観測するとともに、月面の採掘による土壌調査を行う予定である。
探査車
探査車については、車輪使用型と無限軌道使用型の2つの候補が検討されている。 超音波モータを用いたマニピュレータや分光カメラ等が搭載される予定である。
一つはJAXA研究開発本部(ARD/JAXA)が開発を進めているライトクローラである。 4つのクローラを装備した雪上車によく似た駆駆動系をもつ。 ステンレス製の板バネをふんだんに使用することで軽量化に成功、月面での低圧走行を可能としている。
もう一つはJAXA宇宙科学研究本部(ISAS/JAXA)が明治大学や中央大学と共同で開発を進めているMicro5という5輪小型探査車の発展型である。 ペガサスシステムと呼ばれる機構を採用しており、2分割の機体と5つの車輪によって数十cmの壁を乗り越えることが可能な高い走破性能を有している。
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